3.カセドラルロックで自然と一つに

セドナへの玄関、フェニックス空港

フェニックス・スカイハーバー空港、ターミナル2の1階ロビー。レンタカー会社のカウンターがずらっと並んだ通りを抜けて、そのいちばん端っこだったよなぁ…。 あった!〈Greater Arizona Intercity Transportation〉の看板。そうそう、ここがセドナ行き、シャトルバスの チェックインカウンターだ! 昨夜、初めてフェニックス空港に降り立った私。 ・・・日本の自宅を出発してからすでに1日以上が過ぎている。 思考回路は絶たれる寸前。早くベッドで眠りたい!でも、その前にやっておくことが1つある。 サンフランシスコからフェニックスへ向かう飛行機の中で、ずっと復唱していたこと。 〈教訓〉「1人旅はなにより早め早めの情報収集!」エアポートホテルへ向かう前に、必ずバスのカウンターがどこにあるかだけは、確認しておこう! その教訓を守り、昨夜のうちに済ませておいた下見のおかげで、今日はスムーズにカウンターに到着できた。列に並んでチェックインの順番を待つ。でも、なんだか急に胸がどきどきしてきた。

c5 02 pic1

日本を出発する前に

セドナに行くには、不可欠な交通手段のシャトルバス。それなのに日々の忙しさを理由に、ずっと予約することを後回しにしていた。日本を旅立つ数日前になって「やばい!」と、慌ててバス会社のホームページを検索。見つけたページは、案の定、英文だった。予約フォームらしきページが見つからず不安になったが、足踏みしている暇はない。とにかく〈 〉と書かれた問い合わせ先に、頼りない英文で予約メールを送ってみた。ところが、翌日もその翌日もなんの返事も来ない。もう待つ時間はないというのに…。そんなとき、オプショナルツアーの申し込みをお願いした旅行会社の方が、「バスの手配をしますよ。」とおっしゃってくださった。そのおかげで出発までになんとか無事に予約をすることができた。 〈教訓〉「予約は余裕をもって行うこと。」 ―(次回から気をつけます。) 出発前日の朝、「予約は電話でのみ受け付けます。」という内容の返事がバス会社から送られてきた。(遅すぎる…。) そんないきさつがあっただけに、本当にバスに乗れるのか、この場になっても不安が胸をよぎる。でも、私をよく知る親や友達がこの話を聞いたら、いかにも私らしいと納得するんだろうなぁ…。

c5 02 pic2

ついにチェックインを済ませ…

「よかったぁ。名前がちゃんとあった!」名前や乗車の日時を確認され、無事にチェックイン完了!スタッフのおじさんに、呼ぶから待っているように言われ、カウンターのすぐ真向かいにある待合い席に腰を下ろす。 ずっと背負っていたリュックを肩から外し、一息ついてあたりを見回す。 トナカイの顔の帽子をかぶった10代後半と思われる女の子。リボンのかかった大きなプレゼントの箱を小脇に抱えたおじさん。孫(?)に迎えに来てもらったおばあさん。よちよち歩きの子どもを連れた若い夫婦。小さな子からお年寄りまで、他にもいっぱいの人、人、人…。すごい人だ。 昨夜、到着したとき、こんなにも人はいなかったように思うけど…。突然、「ピン!」とひらめいた。 明日はクリスマス。もしかして帰省ラッシュ?きっとそうだ!アメリカ人にとってクリスマスは家族で過ごす大切な一日って本当なんだ。 ふと、思った。たった1人でここにいる日本人の私。でも、全然寂しくない。それよりも、自分がすごい事をしているようで、ちょっとうれしいような不思議な感覚…。 12月24日。バス出発時刻の12時まで、あと1時間!

c5 02 pic3
c5 02 pic4

セドナ-フェニックスシャトル

「セドナ~、セドナ~」と、待合い席に向かって大声で叫ぶ声。数人がイスから立ち上がり、声のする方向へ一斉にぞろぞろと歩き始める。「ここで遅れてはまずい。」と、私も慌ててリュックを背負い直し、オレンジ色の小さなスーツケースをガタガタ引きずりながら、皆の後について行く。待合席すぐそばのドアを抜けると、10メートルも行くか行かないかのところに見覚えのあるバス。白い車体の横に大きな文字で「 SEDONA-PHOENIX SHUTTLE」と書かれてある。インターネットで調べていたときに見た写真と全く同じ、本物だ!にこにこ笑顔のドライバーの男性と軽く挨拶。「荷物はそこに置いといて。後で乗せるから。」と、私たちを車内へと誘導する彼。疑うわけではないけれど、「本当に忘れずに積んでもらえるのかな?」と、寂しく取り残されたスーツケースにほんの少し後ろ髪を引かれながら、バスに乗り込む。運転席のある1列目を除いて、座席は3列。そのうちの2列目が空いている。「よっこいしょ」と、身をかがめながら乗り込み、窓際に詰めて座る。最大で大人のお客10人は座れそうだ。でも、そんな状況はなるべく避けたいな…。その思いが通じたのか、出発まで私の横には誰も乗って来ないまま、バスはついに動き始めた。旅の目的地セドナに向かって…。

c5 02 pic5

静かなバスの旅

ターミナル2から乗ったお客は私を含めて4人だったが、別のターミナルから1人乗ってきたため、全部で5人になった。私以外の4人は外国人男性(あちらから見たら、私だけが外国人だけど…)で、皆、個人客。カップルでも友達同士でもない私たち5人。なんとも不思議なシチュエーションに思えてならない。とはいえ、見知らぬ者同士でも、すぐに会話が始まるフレンドリーなアメリカ人。訳のわからない英語が私の頭上を飛び交い、すぐに車内はにぎやかになるだろう… と勝手に想像していたが、そうではなかった。バスが動き始めたとき、私の前に座っているダンディーな男性が、低い声で何かをドライバーに尋ねていた。でも、その短い会話が終わると、車内はし~んと静まり返り、誰1人として口を開く者はいない。意外だ。私はアメリカ人(…広く、欧米人)に対して思い違いをしていたのかなぁ…?

c5 02 pic6

車窓から…

広くてまっすぐに伸びる道路。きちんと舗装されているから振動はそれほどなく、セドナとフェニックスを結ぶバスの旅は快適だ。いくつかのアジアの国で体験した、くねくねと曲がりくねった道やでこぼこの道…そして、急に割り込んだり割り込まれたりと、ルールはあってないような交通事情…。それも、ある意味緊張感に溢れて楽しかったが、快適とは言い難い。静かで快適なバスの旅。それが私の眠気を誘い、出発してからすぐに記憶喪失。「今回こそ、絶対寝ないで、景色を目に焼き付けよう!」と、固く心に誓っていたのに…。(毎回、失敗)何か違う感覚に襲われ、ふと目が覚める。道路工事だ。工事区間をのろのろと進むバス。たくさんの車の列だなぁ…と、眠りから完全に覚めていない頭で、ぼんやり窓の外を眺める。すると、突然見なれない物体が私の目に入ってきた。西部劇に出てくるような背が高くて、先が数本枝分かれした、いかにも絵に描いたようなサボテン。植えられたわけでもない巨大なサボテンが、あちこちにニョキニョキはえている。 写真に撮りたい衝動にかられて、あわててリュックからデジタルカメラを取り出す。ところが、カメラを構えて窓に張り付いたときには、バスは工事区間を抜け、元の速度を取り戻していた。そのため、何度シャッターを切っても、ピンぼけ。「サボテンの輪郭がわかれば、まあ、いいか。」と、あきらめてカメラをしまう。 それにしても、低木の広がる大地にニョキニョキそびえ立つサボテン。しかも、もの凄い数だ。はえ方は、アスパラガスやつくしと似ているけれど、大きさが違う。いったい何メートルの背丈?どれぐらいの年月でこんなに成長するの?切ったら本当に水が出てくるのかな?食べることができたっけ?などと、レベルの低い疑問項目が次々と頭の中に浮かんでくる。しかし、それも束の間。しばらくの間は見慣れない光景に目を奪われていたものの、それにも慣れ、またまた睡魔が襲ってくる。

c5 02 pic6

いよいよ目前

遠くの方まで広がる勾配の緩やかな大地。でも、途中見たのっぽのサボテンの姿はどこにもない。居眠りを繰り返している間に、いつのまにか景色が少し変わって見えるのは気のせい?「コットンウッド」のバス停で乗客を1人降ろしてから、まだ15分か20分ぐらいしか経っていない。けれども、この景色はもしかすると…と思っていたら、ドライバーが口を開いた。「セドナだよ!」思いと景色が一致した。やっぱりセドナだ!一大決心した初めての1人旅。その記念すべき旅の目的地「セドナ」に降り立つのも、もうすぐ。本当なら今頃、友だちとニュージーランドにいるはずだったと思うと、おかしな気分。不思議な縁。何故か惹かれてやって来たこの町。私を待ち受けているものは何だろうな?

c5 02 pic6

スーパー8

午後2時半すぎ、ほぼ予定通りの時刻にバスは無事、セドナの「スーパー8」に到着した。 「スーパー8」はセドナのバス停がある所で、今回の宿泊先でもあるモーテルの名前。 ピンク色の外観の建物の3階に私の部屋。 1人には十分な広さだし、思った以上に新しくてきれい! 旅先で重宝する冷蔵庫・電子レンジ付きの部屋を選んだのも、大正解。(ジャグジー付きの部屋もあるらしく、それも魅力的だけど…)そして、窓の外には、真正面にドーンとサンダー・マウンテン!ウォルト・ディズニーが、かつてこの岩山を見てひらめき、造ったと言われているのが、ディズニーランドでお馴染みのアトラクション 「ビッグ・サンダー・マウンテン」なのだそう。 そんな偉大な方が同じ岩山を眺めていたのかと思うと、なんだか感動!

c5 02 pic6

ハプニング

「全部キャンセル?そんな馬鹿な…。予約の確認書もあるし、お金だって払ってるのに…。」実はついさっき、こんなハラハラ・ドキドキの一幕があったばかり。 バスから降り、意気揚々とチェック・イン…のはずだったが、フロントのおじさんに「ちょっと、待って。」と言われ、変だなと思いながらも待つこと10分(?)そんなとき、明日のツアーでお世話になる現地のガイドさんが登場。おじさんに何が起こっているのかを聞いてくださった。予想外の展開に本当に一時はどうなることかと思った。 でも、ガイドさんのおかげで、こんな事態になった原因が判明。そして、無事に希望通りの部屋に泊まれることになった。到着した頃に、電話がかかってくる予定とは聞いていたけれど、まさかこんなトラブル発生の最中に、ガイドさんが来てくださるとは…。その幸運と、ご親切に本当に感謝!何はともあれ、移動にはちょっと不便さを感じる場所だけれど、それでもいい!あらためて「スーパー8」さん、3泊4日お世話になります。

c5 02 pic6

買い出しに行く途中

夕方4時すぎ。閑散とした89沿いの歩道を東に向かって、足早に歩く。スーパー8から歩いて行くことのできるショップを2件めぐった後、今向かっているのはスーパーマーケットやマクドナルドのあるショッピングモール。今晩の夕食と 明日の朝食の買い出しだ。 今夜はクリスマス・イヴ。 おそらくどのレストランもクリスマスディナーメニューが用意され、1人で入るにはちょっと勇気がいる。それに夜は部屋でのんびり過ごす方が、今の私の気分にぴったり。明日の朝は、ハイキングツアーの予定も入っているから、早く寝た方がいいし。そんなことを考えながら、ふと、空を見上げた。真っ青な空。筆ですっと書いたような一筋の白い線。飛行機の通った跡。見上げていると吸い込まれそうな気さえする。ただの歩道沿いの景色なのに、あまりの美しさに思わず立ち止まった。そうだ、急がないと…。日没は5時過ぎらしい。日が暮れるまでに買い出しを済ませなくては。用件を思い出し、再び歩き始める。マクドナルドが見えてきた!

c5 02 pic6

ハイキングツアー

12月25日。お天気は、雲ひとつない晴れ!今日は楽しみにしていたボルテックス・ハイキングツアーの日。足元に注意を払いながら、一歩ずつ赤土の山道を登っていく。目指しているのは、今日一つめの目的地、カセドラルロックだ。 道端には、丸い輪郭をしたサボテンをはじめ、見慣れない植物が自生している。落葉した樹木が、カセドラルロックを背景しにて、なんともいえない空気を醸し出している。そして、所々にある岩石を積み上げて作った、ちょっと変わったスタイルの「TRAIL」表示。この表示がなければ道とは思い難いところも・・・。でも、なんのその。今日はガイドさんとセドナ訪問2回目という女性Kさんも一緒!頼もしい方が2人もおられるので、初めての私でも道に迷うことはない。 話をしたり、立ち止まって写真を撮ったりしながら、ハイキングを満喫。カセドラルロックにだんだん近づいていくのを感じ、胸が高鳴る。 壮大な奇岩をあらためて見上げた。「あの岩のどこまで登るのかな?まさか、てっぺんまで?」ふと素朴な疑問。そんなわけないか。ロック・クライミングツアーじゃあるまいし。

c5 02 pic6

カセドラルロック

ゴシック建築の大聖堂を思わせる姿から名付けられたと言われるカセドラルロックは、パワースポットとして知られるセドナの町の中でも特に強い大地ののエネルギーを発する場所(ボルテックス)らしい。ボルテックスのエネルギーは「男性的なもの」「女性的なもの」の2つに大別され、ここカセドラルロックは、女性的なエネルギーふぁ感じられる場所ということだ。精神に働きかけ、バランスを整えたり、浄化の作用をもたらしたりする不思議な力がこの大地から感じられるという。ただし、感じ方は人によって違い、明らかにこのエネルギーを感じる人、感じない人など様々なようだ。 私がセドナに行くことを知っている友達が、「セドナのことが載ってるよ。」と、出発前にある本を貸してくれた。その本に、これたのことが書かれてあった。特別な力を感じる人でなくても、なんらかの影響を訪れた人に与えるボルテックスとは一体どんな所なのだろう?そして読み終わったあとこの神秘的な力を早く確かめたくなった。 私のボルテックス初訪問の地、カセドラルロック。遠い過去、侵食によって造られてきた形なのかもしれないが、その不思議な姿を実際に見ると、神秘の力が宿っていると言われてもおかしくない気がする。 カセドラルロックから見える大自然が作り成す素晴らしい光景。すがすがしい空気。すでに心が癒され始めているのを感じる。もしかして、これも、ボルテックスの神秘的な力の技なのだろうか?う~ん、まだよくわからないなあ。 レッドロックの谷間でカセドラルロックの中でも、特に強いボルテックスを感じる所だと案内され、やっとたどり着いた谷間のような場所。ここでしばらく思い思いに過ごす時間を頂いた。ガイドさんはすぐにどこかへ行ってしまった。Kさんとは、少しの間、こしをおろしておしゃべりをしていたが、この先に行ってみたいと言われ、岩の向こうに消えてしまった。二人ともいなくなり、急に静まり返ったこの場所。私以外に誰一人いない。私はこの場所を離れる気にはならないかっら。全身でこの自然を感じたい。そんな気分になり、岩の上に仰向けに寝転がってみる。 切り立った岩肌。岩と岩の間から覗く真っ青な空。レッドロックと空のコントラストは絶妙だ。そして、突き刺すように降り注ぐまぶしい朝の太陽の光。その光が塔のような形をした岩を照らす。まるで後光が差しているかのように見え、思わず手を合わせて拝みたくなる。そんな感じ。 深呼吸をして、目を瞑ってみる。大自然に抱かれるとは、こういうことなのだろうか?自分の心や体がだんだんとこの自然の中に溶け込んでいくのを感じる。何なのだろう。この気持ちのよさは。言葉では言い表せない、もうしばらく、このままでいたい!

c5 02 pic6

すっかり気分爽快

昨夜、就寝前にちょっとした失敗をしてしまい、自己嫌悪を引きずりながら眠りについた。その上、時差ぼけがまだ残っていたせいか、夜中3時頃に目が覚め、眠れなくなってしまった。どうにか再び眠りについたものの、今朝はガイドさんとの待ち合わせ時刻20分前に起床というめったにない大寝坊。目覚ましのベルを無意識に止めてしまったようだ。おかげで、せっかく昨日スーパーで買っておいた朝食を一口も食べることができなかった。普段から朝食は欠かさず食べることにしているのに、よりによってこんな体力を使う日に食べられないなんて・・・。もちろん、メイクをする暇もなかった。人前ですっぴんをさらけ出すなんて、普段はまずない事だ。 なんて最悪な朝・・・。 当然のことながら、出発前はかなりブルーな気分だった。でも、それがどうだろう!日焼け止めを塗っていないことも気にしないで、太陽の光を思う存分、楽しんでいる私。朝食の代わりにと、慌ててリュックに詰め込んできたチョコレートも今は不要だ。後で食べればいいや! 普段、とても小さなことに捕らえらながら生きている自分に気づく。そんな自分がちっぽけでつまらない存在に思えてくる。もっと大らかに、そしてしなやかに自然体で生きていきたい。そんな気持ちが沸いてくる。 すっかり気分は爽快だ! 今の爽快感がぼる鉄器うすの放つエネルギーによるものかどうかなんて考えることすら、もうどうでもよくなっている。そんなことより、こんな気持ちになれたこと。 それだけで、本当にここに来てよかった!

c5 02 pic6

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です