9.太陽・風そして水の流れ

セドナとは

何億年という時間をかけて水と風と太陽が地層を削り取ってできた赤い土でできた場所。元来ネイティブ・アメリカン(昔はインディアンと呼んでいた先住民の人たち)の聖地として、シャーマンやメディスンマンが、訪れる場所。セドナには、ボルテックスと呼ばれる場所があり、そこでネイティブたちの儀式が現在も行われています。そこには、地球のもつパワー(電磁波などが噴出しているとも言われています。)が集まり、人間に予想もつかない変化を与えると言われています。近年、アメリカ人にとっては、古き良き西部の面影を残す場所として人気が高く、また、ニューエイジと呼ばれる人たちにとっても 聖地となっていて、マドンナを始め有名人がこぞってここに別荘を構えています。 日本では、ヒーラーやチャネラーなどが、ボルテックスを訪れて、その才能を開花させようとしたり、生活に疲れたり、迷うことがある人が訪れる場所として雑誌でも多く取り上げられ始めました。

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まだ早い

妹の知人からセドナ行きを薦められて、いろいろと調べてみると、不思議と繋がることの多さに驚きました。今、大病を背負いながら、生き方を模索し、自分自身を見つめる時間を与えられて、セドナには、何かがあることを直感しました。そして6月に旅行の計画を立てたところが、旅立ちの1週間前に、山火事による国立公園の封鎖が報じられたのです。その時、セドナが、「来るのは、まだ早い。」と言っているように思えて、すぐに中止を決断しました。普通ならそのまま計画は立ち消えになってしまうことが多いのですが、頭の片隅にいつもセドナがありました。そして9月、想いは叶ったのです。

旅立ち

9月9日、旅立ちの日は来ました。仕事で海外に行く時は、総武線と京成線を乗り継いで行くことにしていますが、ちょっと奮発してNEXで成田へ向かいました。やっぱり新宿から旅行気分を盛り上げなきゃ。ちょっと前までは、家族4人で大きな荷物を下げての旅でしたが、今は老夫婦?一歩手前くらいの年齢で荷物も最小限の大きさです。ロサンゼルスまでは、シンガポール航空を利用、エコノミーのわりに座席もそんなに狭くなく、なんといっても、映画が自分の好きな時に、好きなタイミングで見られるし、そのプログラムの多さにも驚かされます。また、食事療法をとっている関係で食事にいろいろと制限があり、事前に多くの条件を伝えていたのですが、しっかりとその条件通りに機内食を用意してくれました。(復路は、少しズレてたけど)そういう点からも、世界で評価の高い所以を垣間見た気がします。 ちなみに見た映画は、往路は、「MI-3」と「県庁の星」、復路は、「X-MEN」と「ダビンチ-コード」それに「花よりもなお」と「フライ-ダディ-フライ」。 帰りは一気に4本も見てしまったのでした。 英国でのテロ未遂事件以来、米国への入国審査も厳しさがさらに増し、時間がかかるとは知っていましたが、一人に5分以上かかる感じで、乗り継ぎ時間が2時間しかないこともあり、かなりやきもき。それでもなんとか間に合い、フェニックスへ一ッ飛び。そこから車で2時間で、憧れの地セドナに到着です。

便利なホテル

宿泊先は、ベスト・ウェスタン・イン・オブ・セドナ。この隣にオーガニックのスーパーマーケットがあり、それが今回の旅の気がかりをすべて解消してくれたのでした。厳しい食事制限(完全菜食、油・塩分抜き、毎食の生野菜ジュース!)をクリアするのに、もってこいの場所だった訳です。到着後、すぐに買出しに。山のようなサラダと果物を買い、店内を散策して、店を出ると、辺りは真っ暗。隣にあるはずのホテルが、まったく見えない。なんと数十メートルの距離を迷ってしまったのでした。それでも、何とかたどり着き、これからの食事の確保ができたことに安堵し、野菜にかぶりついたのでした。その夜は、時差ボケのせいか、まったく眠れずに、それでもやけに元気に朝をむかえたのでした。

カタログツアーは必須

今回の旅は、セドナが初めてということもあり、セットツアーにしました。フェニックスの往復と2回のガイドツアーがついています。これがたいへんうまくいきました。ボルテックスには、有名なスポットが4つあり、それらをすべて巡って、どう行くのか、パワーの中心の場所はどこか、それぞれの特徴を詳しく説明してくれます。これを聞いていないと、フリーで廻っても、たどり着けないし、その場所の意味も分からないという状況に陥ってしまいます。その意味で、初日と二日目に4つのボルテックスと、二つの重要なポイント(ここもボルテックスと言われている)を訪れたことは、後のツアーに大いに役立ちました。初めての人は、どんな形でも、最初に現場に案内してもらうことをお勧めします。今回お世話になった、現地の日本人スタッフが運営するアトラス・アトラスのスタッフのみなさんも魅力的な人たちです。

■ボルテックス探訪■

エアポート・メサ

ホテルから歩いて15分のところにあるボルテックス。山頂が平らで現在空港になっている丘陵(メサ)の隣にある小高い丘(岩)がボルテックスの中心と呼ばれています。東西が開けていて、朝陽と夕陽が両方見られる場所として、人気があるそうです。あまり強い力は感じませんが、四方が開けていて、とても気持ちの良い場所です。頂上への登りも楽ですが、眺望はたいへんすばらしく、風も通るので、暑くなければいくらでも居られる場所という感じです。ただ、木陰とかなんにもないので、日中日差しの強い時は、けっこう厳しいかも。難を言えば、駐車場が狭いのと、時折聞こえる飛行機の爆音がウルサイことでしょうか。ここには、夕陽を2回見に行きました。一回目は、雲が出ていて、今にも雨が降り出しそうな時に行きましたが、ウォルト・ディズニーがビッグサンダーマウンテンのモデルにしたというサンダーマウンテンの向こうに、稲妻が走る様子を見ることができました。黒い雨雲の下だけ雨が降っているのが分かるような暗さで、そこに閃光が光る様は、自然の猛々しさを感じさせました。しかし、振り返ると、夕陽のわずかな光を受けて輝く雲が見えて、なんとも不思議な光景でした。この場所でしか見られない360度のパノラマは、やはり特別な場所という感じでした。 2回目は、雲も少なく、絶好の夕陽日和でした。セドナ最後の夜だったので、ほんとにラッキーでした。頂上に着くと、なぜこんなところにといった感じで、テーブルがありました。その上に綺麗に花まで飾ってあり、これからディナーが始まるような雰囲気でした。これを持ち上げるのは、たいへんだったろうに。妻が何が始まるのか聴くと、若い男の子二人がセッティングして、彼らの友達がこれからプロポーズするのだとか。なんとも微笑ましい話に、ちょっとにっこり。セドナのすべてを見渡せる場所、それもボルテックスの上で、夕陽を背景にプロポーズされたら、誰も断れないでしょう。ところが、日没が近づいても、主人公の二人が現れず、関係ないけどそこに居合わせたものとして、ちょっと心配に。その上、時間が経つにつれ、どんどん人が上ってきて、頂上は、満員状態。お助けマンの二人は、「なんて人が多いんだ。」と思わず叫んでいました。頂上にいるみんなも、様子が分かっているようで、なんだか、そわそわ。そこに、やおら、注目の二人が登場。椅子に座ると、観客からフラッシュ、バシャバシャ!なかなか映画のワンシーンのようには、いかないものです。しかし、それにもめげずに、ケースからギターを取り出し、歌い始める彼。なかなかの腕前に、観客は聞きほれていました。プロポーズの歌が終わると、なぜかヤンヤの拍手が起こり、おいおい、本人たちにわるいじゃない、なんて思うのは、日本人だけなのか。ロマンチックなはずのプロポーズも、みんなに祝福された大盛り上がりのものとなりました。それはそれで、素晴らしいことだな、なんて思いながら、アレンジした友達に、静かに拍手を送りました。

ベルロック

その名のとおり、ベルを伏せたような形状に、誰でもきっとそう名づけるよなと思わせる場所です。ここは、男性的な力、たとえば決断力とかそういう強いパワーを持つ場所として知られています。今回の旅を勧めてくれた方は、ここで動けなくなり、長年治らなかった膝が、治ってしまったという神秘体験をしたそうです。 私たちもそれにあやかりたいとパワーのありそうな場所を探しました が、まっ、そんなに都合よくいくもんでは、ありませんでした。2回目に訪れた時は、奥様が、どうもここの空気が合わないと言い出し、辛いのに、居ることもないと思い、早々に引き上げようとしたとたんに、大雨が降ってきて、なんだか、不思議なおもいをしました。たぶん、それぞれのボルテックスの持つパワーがいろいろあって、それが、合う人と合わない人がいるみたいです。私には、そんなに違和感は、なかったのですが、優しさとかそういう雰囲気では、ないなというのは、漠然と感じていました。隣に裁判所のような岩(コートハウスロック?)があり、この二つがなんとも、絵になっている場所です。遠くから見ると昔の西部劇に登場しそうな、そんな場所です。

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ボイントン・キャニオン

カタログツアーで最初に言ったボルテックスです。 時差ぼけのせいか睡眠不足で、おぼつかない足取りで、トレイルを歩き始めました。最初は、なんともなかったのですが、だんだん、左半身に力が入らなくなり、何かに引っ張られるような感覚を覚えました。これが、ボルテックスの強さかと実感しました。ただ、気持いいという感覚ではなく、ちょっと辛いといったほうが近いと思います。そのことがどんな影響があるのかは、まだ分かりませんが、たしかに、なにか大きなパワーを感じた最初の場所でした。ガイドの人が、たいへん残念なことですがと、説明してくれたのは、頂上近くに行くと見える、向こう側の谷全体に、コテージが点在する巨大ホテルが作られてしまったことです。なんでもスパとしては、世界第2位の評価を得ているホテルだそうですが、ネイティブ・アメリカンと開拓者の歴史を彷彿とさせるようないやな感じを持ちます。旅行者がどうこう言うのもおかしなことですが。あとで分かるのですが、アメリカ人にとって、この場所の持つ意味というのは、私たちとまったく違うようです。 2度目に訪れた時は、とにかく、ゆっくりしてみたいと思っていました。トレイル間違いもありましたが、目的地に着くと、前のような体の変化はなく、ただ、同じ場所なのに、地肌がまるで違っているように感じました。「こんなに岩が砕けてなかったよね。」が二人の同時に発した言葉でした。このボルテックスには、垂直に上らなければたどり着かない頂上があり、登山に慣れた人しか行かないと思っていたのですが、どうも日本人の女性らしい人が一人頂上に立っていたので、ちょっとビックリ。降りてきた彼女に聞くと、そんなに危なくなく登れるとか。ベルトに差していた棒のことを聞くと、なんでも偶然見つけたネイティブ・アメリカンの笛だとか。初めて吹くといってちょっと音色を聞かせてもらったのですが、なんともその場の雰囲気にピッタリで、ぜひとも欲しくなってしまったのでした。店の場所を聞くと、どこぞの商店街が途切れた先にある、小さな店の集まったところだとか。絶対見つけて、買おうと心に誓ったのでした。さて、簡単に登れるという頂上へ登って見たくなり、アタックを開始。ちょっと厳しい高さのところがあり、普段なら断念するところを、どんどん体が登っていってしまう感じで、頂上に到着。登ってみるとたしかに簡単。岩のてっぺんに座って、座禅の真似事をしてみるのでした。360度のパノラマは、まるで宙に浮いているような感じ。目の前には、カチーナ・ウーマンと呼ばれる岩がすっくと立っています。ネイティブ・アメリカンに伝わる伝説で、地上に現れた最初の人間と言われるカチーナを象徴する岩です。なぜか、自然とそちらを正面に向いてしまいます。そして思考を止めようとするのですが、やり慣れてないことは、そんなにすぐにできるわけもなく、いろんなことが湧いては消えていきます。どうもボルテックスで起こるという神秘体験を求めすぎていた自分におぼろげに気づいたのでした。自分の過去生が見えたり、涙が止まらなくなったり、病気が治ったりとかいう現象のことです。実は、カルロス・カスタネダという人の本にあった、宇宙の流れが見える場所としてイメージしていました。もちろんそういう劇的な変化はなかったのですが、変化は徐々に起きていたようです。とにかく、多くを求めるのではなく、あるがままに、そこにあることを感じ取ろう、それがボイントン・キャニオンで得たことです。そしてそれは、セドナでの過ごし方の基本のような気がしました。

カセドラル・ロック

カセドラル・ロックには、行く前から惹かれていて、実際に行ってみてもやっぱり特別な場所でした。三日目の朝に、ガイドツアーが組まれていて、早朝5時半に集合、登りながら日の出を見ようという趣向です。カセドラル・ロックへは、トレイルを歩いて2時間かかるというのが、日本での情報でした。往復4時間は、なかなかキツイなーと思っていたのですが、ツアーは、ロックの裏側に車を止めて、一気に登っていくというルートで、勾配がキツイ箇所を何箇所か征服しなければならないのですが、40分もあれば、到達できました。とにかく行ってみないと分からない。途中で後ろを振り返ると、朝陽がま さに昇ろうとしている瞬間で、言葉もない光景に見とれます。ボルテックスのすぐ上まで到達するには、後半から、岩の割れ間を這い上がったり、日本なら必ず鎖が付いていそうな急勾配を登ったりと、かなりスリリングなトレッキングです。 でも何故か、危険な気持を感じることもなく、すいすいと目標の場に到着。ボイントン・キャニオンの時と同じように、不思議な安心感が生まれる場所のようです。たどり着いた場所は、搭のように立つ細い岩の根元で、一歩足を踏み外すと、まっさかさまという断崖絶壁の上です。そこは、風の通り道らしく、場所によって、強い風が吹きます。幅2メートルくらいの踊り場の先端では、まさに空を飛んでいるような絶景が広がります。ここで、裸足になり、仰向けになると、聞こえるのは、搭の頂上に巣を作っている小鳥たちの声だけ、時々、優しい風が頬を撫でます。このシュチュエーションだけでも、ここに来るかいがあります。その時は、カタログツアーだったので、レンタカーを借りて、すぐにでもこの場所に来ようと決めたのでした。  カセドラル・ロックというと、セドナの象徴としてカレンダーの表紙を飾る存在ですが、それは、おもにレッドロック・クロッシングという、川のほとりから撮影した写真が一般的です。川の流れの向こうにカセドラル・ロックが真正面に収まった写真が、それぞれの季節ごとに美しく紹介されています。だから、レッドロック・クロッシングからの景色を見て、カセドラル・ロックに行ったと思い込んでしまう人が多いのではないかと思われます。でも、ほんとうは、あの美しい姿の中にこそ、ボルテックスとしてのカセドラル・ロックの素晴らしさがあるのです。今回、何故か、カセドラル・ロックの正面からの写真が1枚も撮れませんでした。カメラを忘れたり、取り忘れたり、はたまた、トレイルを間違えて逆サイドへ行ってしまったりと。 なんとも不思議なのですが、セドナの象徴である正面からのカセドラル・ロックを撮影できなかったのです。これは、「もう一度おいで」といいうセドナからのサインに違いないと納得したのでした。 クラッシクタイプのクライスラーを駆って、ゆったりカセドラル・ロックツアーに出かけました。最初ほどではないにしろ、早い時間だったので、まだ、込み合う様子もなく、岩を積み上げた目印を頼りに、登っていきます。前回の険しい難所は、まだ来ないのかと思いつつ歩を進めます。すると、なんと、あっという間に目的地に着いてしまったのです。そう、同じコースを進んだにも関わらず、二度目ということもあるのか、まったく難所という感覚なしに踏破できてしまったのです。これもボルテックスの不思議でしょうか。途中出会った若い日本人のカップルは、女性が難所の前でギブアップしていましたが、男の子に、頂上は最高だよと二人でそそのかして、連れて来るように仕向けたのでした。そしたら、彼女も頑張ったらしく、一緒に上がって来ました。きっといいプレゼントになったのではないかと内心ほくそえんだのでした。 頂上には、ゆっくり1時間以上、ボーっとしていました。前回見つけた場所に、座り、風を全身で感じながら、遠くの山並みに思いをはせ、悠々と飛ぶ鳥になったような気分で眼下の景色を眺めていました。ここで感じたのは、すべてが洗われていく感覚です。浄化という言葉がたぶん近いかなと思います。他のボルテックスのような強い力ではなく、なんとも優しい力に抱かれているような思いをしました。セドナで、ここでの印象がいちばん強かったように思います。そして不思議にもこの間、だれも上がってこず、最高の場所を独占していたのでした。そして、降り始めると、大勢の人たちとすれ違いました。まさしく、カセドラル・ロックが用意してくれた奇跡のような1時間でした。そして、必ず、ここにもう一度来ると心に決めたのでした。

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ネイティブ・アメリカンと

セドナは、ネイティブ・アメリカンにとって聖地ですが、住む場所ではないと言われています。したがって、セドナの街を歩いていても、一人もそういう人に出会いませんでした。お会いできたのは、スエット・ロッジというネイティブの儀式に参加した時です。スエット・ロッジとは、テントの中で熱い石に水をかけ、サウナのような状況の中で、精霊を呼び出し、交信をするという儀式です。もともとネイティブの思想に興味があって、何冊かの本は、読んでいましたし、10 年以上前に、仕事でカナダに住むネイティブの人たちと1週間くらい、一緒にいたこともあり、とても身近に感じていました。というより、その考え方にこそ、今、自分の置かれている立場~大きな病の中で、見つけようとしている何かがあると確信していました。だから、このプログラムだけは、受けたいと思っていたのです。もちろん、ツアー会社が、イベント的に開催する訳で、ネイティブの人たちが、日常に行っているのとは、たぶん違うだろうし、雰囲気を味わうだけでもいいという思いはありました。  ロッジは、セドナから少し離れた、ネイティブの人の自宅で開かれます。チーフという役割の男性が、事前に儀式やネイティブの生き方について説明をしてくれます。直前に大雨が降ったとかで、石を熱する焚き火がなかなか熾きずに、そのおかげで多くのお話を聞くことができました。印象に残ったのは、「バランス」の話。私たちは、普通、たとえば良いことと悪いこと、好きと嫌い、男と女、などを両極端として捉えます。しかし、彼らは、それらの言葉を前にして、そのバランスを取ることを考えると言います。すべては、バランスで成り立っているという発想です。私たちは、良いと思われることを追い求めるのは当然のことと考えます。しかし良すぎると、そこに違う気持が生まれるというのです。例えば、裕福でありたいと求め、実現されると、もっと富を求め、欲に悩まされ、妬みを買います。人生は、プラスマイナスのバランスで成り立っていると考えれば、決していいことも多くを求めるのではなく、その反対のことも考えながら行動しようというものです。現代の抱えている問題、例えば環境問題や宗教による対立など、この発想で考えられれば、きっと解決の糸口が見つかるかもしれません。  ロッジの大きさは三畳くらいで、入り口を閉じると真っ暗になります。そこに参加者が車座に座り、中央に掘った穴に、赤々と焼けた石を入れます。そして4つの方向に旅に出ます。東西南北にそれぞれの意味があり、手助けをする精霊が降りてきます。それは、先祖たちで、彼は、GRAND FATHERと呼んでいました。その儀式の最中、ほんとは、思考を中止しなければいけないのですが、そんなにうまくはできっこなく、ただ、一つの考えが浮かんでいました。それは、自分がこれまでしてきたことは、すべて自分のためではなかったか?という疑問です。いつも人のことばかり考えて、とか言われていたこともありました。でも、それは、自分というか、自分の美学の実現ということから発していなかったか?その考えは、だんだんはっきりとしたものになり、次のステップへ進む時が来たという感覚にとらわれました。ネイティブとのつながりの中では、あわよくば、自然~宇宙のつながりが感じられたら(神と呼ばれているものの体感?)という思いはありましたが、まだ、自分自身が、そこまで、まったく到っていないと感じました。今は、まだ、自分自身をもっと見つめなおし、変わっていくことが必要なような気がしています。奥様は、儀式の一つの掟により、ロッジに入れなかったのですが、儀式の間に、何か石のようなものが飛んできて、体に当たったと言っていました。一緒にいた女性も同じことを体験したそうです。回りになにもなかったことから、もしかしたら、神秘現象が起きたのかと思わせたできごとでした。どうも奥様のほうが、いろんな意味でパワーが強いらしい。その後、家の中で、ネイティブの普段の食事をご馳走になり、一人一人に、彼が感じたことについて語ってくれました。私には、これまでの活動と違った奉仕的な活動をするようになるだろうと予測してくれました。ちょうど考えていたことに近い言葉にちょっとびっくりです。奥様は、もっと今の状況を言い当てられて、驚いておりました。  カナダのネイティブと仲良くなり、実は、正式な儀式を受けて、インディアン・ネームを授かっていたのでした。あわよくば、ネイティブの人にその意味を聞けたらと思っていました。White Spotted Wolfという名前は、ずっと気に入っていて、その時、どんな意味があるのか聞いたような気もするのですが、すっかり忘れてしまい、チーフに聞いてみました。White は、良いとか正しいとかいう意味があり、Spotted には、秘密、Wolfは、特別な役割を持った強い生き物という意味だそうです。んーなんと解釈すべきか。あえて自分の状況に近づけて言えば、今回の旅も含めて、病を得てからの自分なりの考えや生き方、秘訣はないかもしれないけど、ヒントはあるかもしれない、そういうものを伝える役割ということになるのかもしれないと勝手に解釈したのでした。  帰り際、彼のお孫さんが、すっかり私になついてしまい、離れがたい気持でしたが、夜も相当遅い時間になり、退散することになりました。超常現象よりも、ネイティブの人たちの生き方に触れることができてことがとても心に残った一日でした。それから”GRAND FATHER Said”という枕言葉がしばし、流行言葉になったのでした。

アメリカ人

トレイルで、なぜか3度もすれ違った夫婦とすこし仲良くなり、話していると、彼らは、なんと、ボルテックスという言葉も知らないらしい。日本人旅行者の多くは、ボルテックス目当てにくるというのに。とても不思議な気がしました。後で、現地のパンフとかを見ていると、どうも、セドナは、シェーンを代表とする西部劇の舞台として、古き良きアメリカの一つの象徴として捉えられているようで、ネイティブの聖地という認識があまりないのだということに気づきました。ネイティブと日本人、もともとはモンゴロイドという点では、大きなつながりがあります。ものの感じ方も近いように思います。アングロサクソンに代表されるアメリカ人とは、やっぱりかなり違うのかなと、そんな会話の中で感じたしだいです。

間違いトレイル

今回、いろんな不思議なことがありましたが、ちょっと笑える話。4つのボルテックス周辺には、直接そこにいけるトレイルと、ほかにもいくつかのトレイルが交差しています。4つのうちなんと、3つのボルテックスで、間違ったり、予想外の展開をしてしまい、それぞれ2~3時間、彷徨い歩いてしまったのでした。最初は、エアポート・メサでした。空港がある小山を一周するトレイルがあり、時間もあるから、歩いてみようということになったのでした。それが大きな間違い。ぐるっと一つの山を越えると、なんと次の山が出現。これを廻ればと思い、頑張って前へ進むと、さらに山が。この連続で、引き返すのもたいへんなところまで、行ってしまいました。だれもすれ違わないこともあり、ちょっとドキドキ。やっと折り返しらしきところに出て一安心したものの、これから先もどうなることやら。しかし、同じ山なのに、全然景色と山の雰囲気も違い、それなりに楽しめたのでした。入り口で、ボルテックスの岩を拾って持っていたのですが、始めは緑色だったのが、逆の斜面に行ったら、それが灰色に変化していて、すごくびっくり。ちゃんと返してくることにしました。復路は、なぜか往路よりも短く、一般道へ出たのですが、なんと、出口には、ガードレールでしっかり塞がれていて、これは、だれも来ない道なのかと、呆れたしだいです。 次は、ボイントン・キャニオン。こちらは、ボルテックスに上がる道だと思い、歩いていったら、どうもいくら行ってもたどり着かないという大ドジ。トレイルの表示がわかりにくかったというのもあるのですが、登り坂にならないことに早く気がつけばよかったのに、途中でこれは山を廻る道だと気がついた時には、けっこう歩いてきてしまい、またまた悪い癖で、もと来た道を戻るよりは、先へ進めという選択をしてしまったのです。これまた、エアポート・メサとまったく同じ、一つ山越しゃ、次の山という状況で、なんとも学習しない人たちなのでした。さすがに、これは辿り着かないと悟った時には、1時間以上歩いてしまっていたのでした。あとから確認したら、山を一周するトレイルではなく、まったく違うところに出てしまう道でした。とほほ。 最後は、カセドラル・ロック。ここは、日本での情報で2時間かかるという道を探していたら、アメリカ人の夫婦が、地図をくれたので、それを頼りに探検を開始したのでした。それが、またまた大ドジ。地図をさかさまに見てしまい、行けども行けども、カセドラル・ロックの表側にたどりつかない。さすがに、最初からちょっとおかしいと気づいていた奥様が、あの岩がここから見えるのは、逆方向だと、主張、協議の結果、引き返すことになったのでした。さすがにトレイル間違いも3度目、呆れるというより、これは、きっとなにかが、そうさせてとしか思えないと、自らのドジを認めようとしない老夫婦だったのでした。とほほ。

50年前の近代建築

セドナの観光スポットになっているところに、ホーリークロス教会があります。赤い岩の景観をそのままに、ここにしか存在しえないというように立っている教会です。その様式は、つい最近建てられたとしか思えないくらい斬新で、そこからの眺望は、ネイティブの聖地にあるという違和感をまったく感じさせない調和を保っています。向かって左側には、聖母マリアが、キリストを抱いているように見える岩がそびえ、左側には、カセドラル・ロックの背面が正面と異なる趣で眺められます。中に入ると、讃美歌が澄んだ空気のように流れ、不信心者でも、清められたような雰囲気になります。私は、教会の外の左側の縁がどうもいちばんしっくり来る場所のように感じました。カセドラル・ロックを遠くに眺めて、正面からの風に吹かれていたら、なんだか、涙が出てきそうになりました。今回の旅の中でも、ほんとうに何時間でも居られる特別な場所を見つけた気がしました。

魔法の石

日本にいる時に読んだ本の中に、大事にしている石を、カセドラル・ロック近くの小川の澄んだ水につけると、石が浄化されて、力をつけるという記述があったので、日本からわざわざ石を持ってきたのでした。ところが、この小川の場所がわからない。カセドラル・ロックへの2時間かかるトレイルの途中にあるという場所が、現地のガイドさんに聞いても分からないので、とりあえず、レッドロック・クロッシングから行ってみて、自分たちが「呼ばれる場所」でやってみようということにしました。レッドロック・クロッシングは、有料の公園になっていて、二人で7ドルかかります。でも、他から紛れ込むことは簡単そう、近所の中学生の遊び場になっていました。まっ、観光で行かれた方々は、いい環境を守るために、しっかり払いましょう。ここは、とにかくカセドラル・ロックを正面から見るには、絶好の場所で、しばしその姿を堪能した後、川の上流へいけるところまで、さかのぼることにしました。なんとなく道らしきものがありますが、しっかり整備されているという状況ではありません。何箇所か川に出られるとこがあり、かなり先まで行ったところに、とても惹かれる場所がありました。なんだか穏やかな雰囲気を持つ場所だったので、そこに決定しました。持っていったのは、日本から持っていった石と友人から預かったもの、そして現地で買った水晶やきれいな石たちです。事前に準備したネットにそれらを入れて、川に沈めました。あんまり気持ちがいい場所なので、川の中の岩に腰掛けて、しばし足をつけていました。川の流れを見つめていると、その場所に居ることが前から決まっていたような感覚になりました。流れる水は、同じではなく、この一瞬にしか触れないもの。川の流れは時間のようにとどまらず、いつもはこの流れの中に流されているのに、水が足首に当たって別れるのを見ていると、時間の流れの中に立ち止まっているような気持ちになりました。清らかな水の流れは、恒久の時の流れのようでもあり、きらきらと光る水面は、生き物たちの一瞬のきらめきのようでもありました。そんなことを思いながら、けっこう長い時間が経ってしまったようで、ネットを引き上げると、中の石たちは、輝きを増し、それはもう水につけた時と、まったく違うものに見えたのでした。二人とも声をあげて驚いたほどでした。一人なら思い込みというのもあるでしょうが、二人がはっきりその変化に驚いたぐらいですから、事実なんだと思います。そして、不思議はこれだけではなかったのです。次の日、カセドラル・ロックに登った時、例の間違いトレイルで迷った後、しっかり、正式なルートに戻って、目的地をめざしたのです。1時間半以上かかって、行って戻った後だったので、また新たなトレッキングは、きついと思いそうなのですが、迷うことなく、先に進みました。今度は間違いなく、ロックの正面の方向へ向かっていて、途中で、日本で紹介されていた、現地では分からなかった2時間のトレイルコースだと確信したのでした。しばらく進むと、川のせせらぎの音が聞こえてきました。もうすぐ、当初目指した石の浄化の場所だと直感しました。しかし、今日は、石は持ってきていなかったので、チャンスがあれば、また来ようと思っていました。  そして、道が開けた時、そこには、小川が流れていました。そして、上流のほうを見て、「あっ」と言って、言葉につまりました。向こう岸に、昨日座っていた岩があるのです。なんと、昨日、石をつけていた場所の対岸だったのです。なんだか、鳥肌が立ってきて、しばらくその場所に佇んでいました。川は、かわらずに、美しい水をたたえて、ゆったりと流れていました。

ちょっと耳寄り話

日本で、難病に効くということで、高価で販売されているフレーバー・ティーがあります。開発したおじさんの名前がそのままついている、緑のパッケージのやつです。日本では、1箱、6,300円で売られていました。それが、上得意のニューフロンティアで、13ドルで売っていました。なんだか、ボラレてるなーと思いつつ、買占めに走ったのですが、既に売り切れ、2箱ゲットにとどまりました。これなら、いっぱい買っていって、日本で商売できますよ、ほんと。  それから、ボイントン・キャニオンで、日本人のオネーさんが持っていた笛ですが、店の場所がよく分からなかったので、諦めかけていたのですが、Yという交差点からベルロックへ向かう途中の左側、中途半端なところに、ちょっとへんな雰囲気の店が集まった場所があります。どうしても気になってしょうがなかったので、寄ってみたら、大当たり。オネーさんの言っていたお店でした。迷うことなく、ネイティブ・アメリカンの笛をゲット。そしたら、お土産ものも、他にはないものが、比較的安く、けっこう買い込んでしまったのでした。お客は、日本人はほとんどいなくて、国内の旅行者が多いみたいです。アップタウンとか、テラカパキとかは、なんだか伊豆のお土産物やさん界みたいですが、ここは、ぐっとローカルでよいです。あとは、日本でもよく紹介されているクリスタル・マジックは、たぶん、アップタウンなんかより水晶はずっと安い感じでした。

鳥になった

旅の真ん中の日、これもどうしても参加したかったバルーンツアーに参加しました。夜明け前に出発し、気球の上で、夜明けを見て、早朝のセドナの上空を散歩しようという企画です。ここで、太陽の力を目の当たりにしたのでした。朝陽は、切り立った岩山からゆっくりと昇り始めます。そして太陽の光が地上に届く時、一日の始まりをすべての生きとし生けるものに、告げます。上空から見ていると、低木が、自分の身の丈よりも長い影をまとい、谷の中腹に建つ家の窓ガラスは、きらきらと輝きだし、野うさぎが、穴から出て、走り出すのが、はっきりと見えます。何十億年も続いた地球の数え切れない一日の始まりが、今、ここでもまた繰り返されているということが、例えようもなく、いとおしく、そして感動的です。そして、太陽は、そこにあるすべてのものに、平等にその光と力を与えます。なんて当たり前のことなのに、こんなにも輝かしく、尊い瞬間なんだろう。宙に浮きながら、神の視点を思いました。 バルーンは、パイロットによって、コースや高さが違うみたいで、私たちの乗ったバルーンは、かなり上空を飛びました。高い所好きの、私としては、気分は最高でした。ただ、パイロットのおじさんが、遠くに居る彼女に電話しまくっていて、ちょっとまじめに運転しろよと言いたくなってしまったのでした。まっ、そんなおおらかなところが、アメリカなんでしょう。バルーンは、離陸したところに戻るのではなく、風に流されて、着陸可能な広い場所を見つけて、地上に降り立ちます。そして、5つのバルーン乗客全員が集まって、シャンペンで乾杯!おしゃれに幕を閉じました。

太陽・風そして水の流れ

セドナに居た時間は、まるで自然に導かれるように、いろいろな場所に行きました。日本にいたら、こんなハードなスケジュールは絶対こなせっこないと思うようなことも、なんの抵抗もなく、できてしまいました。現地のガイドの方が、言っていた言葉が印象的です。セドナは大きなピップエレキ判、だから、どこにいても元気でいられる。まったくそのとおりです。 自然に導かれるまま、自然の語りかける声に耳を傾ける、そして感じ取る。そのことの素晴らしさを教えてくれた旅でした。太陽は、すべての生き物に光と力を与え、風は、すべてを洗い流し、水の流れは、時間と寄り添うように常に新しい水を運びます。自然は、あるがままにそこにある。それを私たちは、感じればいい。感じる心を持っていさえすれば、だれでも感じ取れるのです。現代社会という大きな渦の中で生活していると、忘れてしまう自然の流れを、セドナは、優しく私たちの心を開いて、その有りようを見せてくれる。シャーマンのように特別な世界を見られなくても、例えばヒーラーと呼ばれる人たちが遭遇するという神秘現象に出会わなくても、セドナは、いつもそこにあって、私たちを迎えてくれます。ほんのちょっと、心が開いていれば、セドナは、きっとさらに大きく、その窓を開き、自ら大いなる自然の流れを見せてくれるはずです。来年、また来ます。

おまけ(不思議現象)

帰りは、ロスアンジェルスで、飛行機を乗り換えなくてはならず、多くの乗降客でごったがえす空港で時間を過ごすことになります。セドナから急に大都会の人ごみに投げ出されてしまい、行きかう人の目つきを見ただけで、もう疲れが出そう。なんで、そんなに急いで、攻撃的なんだよー。ちょっと帰るのがいやになってしまったのでした。 なんとか、飛行機は飛び立ち、ずっと起きていようと決めていたので、さっそく映画を見始めたのでした。最初は、X-man3、ストーリーはともかく、なんとなく雰囲気のあるキャストで、楽しめた映画でした。つぎに、ダビンチ・コード。この映画の途中からキーマンが登場するのですが、この人が、前のX- manに出ていた人だと、心に浮かんだのです。それは確信を持ってそう思えたのでした。いざ、その顔がディスプレイに映しだされた時、やっぱり、思ったその人でした。これから、こんなことがけっこう起こりそうだなと、なんとなく思ってしまったのでした。

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